このように畜産業界から流通するゼム酵素による堆肥とは如何なるものであるかを解説する。
これらは数字的に共通の基準を設けている。
最も重要なのは
炭素率であり、これは上限を20とする。
炭素率が20を越えてしまうと有機態窒素は無機態に変化しない。
作物は無機態窒素しか吸収できないので、例えば有機態窒素がふんだんに存在する畑地でさえ作物は窒素飢餓を起こすのである。
次に窒素全量である。
これを1%以下に抑えることを第二の目標に掲げている。
従来生産者は、より高い窒素含有量の堆肥を良い堆肥とする傾向が続いてきた。
確かに初期の作物成長を見ようとするならば窒素が多い方が優秀に見える。
しかしその概念が日本の土壌を
硝酸態窒素で充たしてきてしまったのである。
しかも有機物由来の窒素は
病害虫・病害菌の発生要因であり、過多であると特に果樹などでは割れや食味の劣化なども引き起こしてきた。
ゆえにゼム酵素での堆肥製造工程においては、窒素を出来る限り含ませない堆肥製造を心掛けている。
欲しいのは窒素でなく、活性を持った
有用土壌菌群、そして保肥力を高める腐植酸である。(堆肥は肥料でなく土壌改良資材であると言う概念を持つ)
腐塾が充分でない堆肥施肥によって硝酸態窒素が蔓延してしまったがために、今でも地方の農業指導層の中には、硝酸態窒素ゆえに堆肥が使用できないと言う誤った考え方持つ方々を見かけるが、窒素量が少なく濃厚な菌群活性が見られる堆肥(ゼム酵素堆肥で
5.2×10/gの菌群を保有)だけが硝酸態窒素の処理を行えるのである。
つまり活性した菌群は増殖のエネルギーに満ち溢れているが、増殖のためには細胞を形成するタンパク源が必要である。
硝酸態窒素過多の畑地では当然それら
硝酸態窒素がタンパク源となり、硝酸態窒素は彼らが生まれ出る為に消費されて行くのである。
それゆえにこれまで死んだ農地と言われた過肥の農地にあっては、菌群が再びの活性を取り戻し生きた農地への回帰が始まるのである。
ちなみに硝酸態窒素過多で、増殖のためのタンパク源が豊富な土壌であるにもかかわらず今まで自然に菌群活性が見られなかったのは何故だろうか?
それは生理的酸性肥料である化学肥料の過度な使用も同様であるが、未完熟で高い含有窒素堆肥の使用が、長年の間に
土壌を酸性化してきたためである。
菌群活性は弱アルカリ気味の土壌で最大に発揮され、酸性に傾けば傾くほど活性が見られなくなる。
そのような酸性化の進行によって菌群の活動が抑制される事で、投与された肥料成分も分解(イオン化)出来なくなり、化学的変質しかしなくなる結果である。
窒素は硝酸態窒素として残存し、石灰肥料も炭酸ガスとの反応で不溶性の炭酸カルシウム化してしまうために、
石灰量が過多で酸性という矛盾した土壌だけが農地として残っているのである。(日本中同一の土壌である)
土壌分析によって中和石灰量が過多であると指摘されると、農家は石灰を用いなくなり、ゆえに作物は更にカルシウムを失って作柄が悪くなってしまう悪循環の中にあるのである。(ゼムのスケール除去能力が石灰を分解する)
以上のような理由で、ゼム酵素による堆肥は炭素率と窒素含有量を最も重視して製造する。
硝酸態窒素処理も残存石灰イオン化処理も、ゼム堆肥使用環境で菌群の圧倒的活性環境下ゆえにこれらを可能ならしめている。
またゼム酵素は植物性酵素の集合体であるが、堆肥製造時に副資材として併用するML液は、特に天然系害虫忌避植物群からの酵素を主体としている。
しかもこれらが自然界以上の働きが出来る様に、複合するミネラルも十二分に添加されている。
ミネラル群を補酵素として使用する事により、それぞれオリジナルの酵素成分がより広範囲に守備範囲を広げてもらうためである。
このような堆肥を生産者が使用する事により、農業生産現場では様々に劇的な変化が観察されている。
土中のセンチュウをはじめとして様々な害虫がその姿を見せなくなり、同時に作物の病気も激減した。
軟弱野菜をはじめとした野菜群が収量を倍増させ、品質も大きく向上した。
リンゴなどの果樹では収穫量の増大は観察されていないが、野菜群がそうであるように明らかな生命活性が付与され、その色付きや食味は激変した。

現在、最もまとまった形でゼム酵素堆肥の生産を継続しているのは、最初に資源循環型社会構想を手掛けた沼田モデル関係地域(沼田市・昭和村・新治村・利根村・川場村)である。
そして最もまとまった形でゼム酵素堆肥を使用しているのは青森県大鰐町をはじめとしたJA津軽弘前管内である。
大鰐町をはじめとした津軽弘前管内の農家は、春蒔も秋蒔も東北地方を縦断して北関東の沼田の堆肥を購入し使用しているのである。
直線距離でも約600kmに及ぶ距離を運搬してである。
当然運賃が加算されるので高い堆肥になっているが、それでもJA津軽弘前が窓口となってリンゴ部会やトマト部会のために大量の堆肥を調達している。
高価な堆肥でも、彼らは沼田の堆肥(ゼム酵素堆肥)を離そうとはしない。
それだけ様々な実証を成し遂げた故である。
トマトや茄子は収量を倍に伸ばし、同地で生産されるリンゴの多くは
酵素リンゴの名称をブランド化して通販業界では最も老舗と言われる高島屋の通販選定商品となっている。
その色付きの見事さと味わいの素晴らしさは他に比類のないリンゴとして仕上がっている。
また昨年はあの激しい冷害の想定無しに米作のデータ比較を、青森・山形・群馬・鳥取の各県で行い、いずれも例年より1〜2俵多めの収穫を得た。
冷害の昨年だけの比較で言えば、場所によっては倍増さえしていた。
しかも全てが1等米の判定を頂いた。
あの日照不足の中にあってイモチ病も入らず、対象区と比較しても緑が鮮やかで、しかも対象区のものと比較にならない大粒の米を有効分けつした全ての穂から得る事が出来たのである。
しかもゼム堆肥使用試験田の下流側低部で、水の影響を受けた田では施肥試験田の約70%の収穫量が確認された。
通常何もしなかった田との比較では、水の影響だけで大幅増であった。
また花卉生産農家では身の締まった花が、原色のような鮮やかな色を付けて収穫されたと言う報告もある。
いずれにしてもこれがゼム酵素による堆肥であり、生命活性が明らかである。
意識的に病害虫を忌避し病気を抑制し、高品質の作物の収量が倍増する堆肥。
畜産同様、農業生産者が農業を楽しいと感じてくれる農業生産の構図である。

近年言われる「食の安全」、そしてそれに伴って論議されている「トレサビリティ」は、目前に法制化の動きまでもが伝えられている。
V6と呼ばれる極小のチップに膨大な情報がインプットされ、末端店頭でそれら情報を消費者が確認できるようになる日は目前に迫っている。
今後は野菜一把、大根一本が全ての履歴情報を持って流通する事になる。
そうなれば当然農薬や化学肥料を大量に使用してきたこれまで同様の作物は売れなくなり、旧来型の農業は立ち行かなくなってしまう事は明白である。
然るにこれまで長年にわたって農協から農薬の使い方や化学肥料の使い方、または病気に対する様々な農薬群をあてがわれ教えられてきた農業生産者は、それ以外の農法を全く知らぬまま現在に至っていると言っても過言ではない。
食の安全を追求するためのトレサビリティの充実は、確かに消費者にとっては喜ばしい限りであるが、土壌についても作物についても、はたまた肥料についても知らない農家にとっては一大試練となる法制化である。(農薬農法以外を知らないため)
皺寄せは全て生産者に行く事になる。
そこでゼム酵素の様々な機能性が必要となるのである。
食の安全を志向したトレサビリティも、生産方法の啓蒙なくしてはバランスを欠き、結果システム全体を崩壊させかねない。
魅力ある畜産、魅力ある農業を生産者全てに取り戻させてこそ、本当に安全で活力ある農業を作り出し、ひいては消費者に真の安全をもたらすのである。
農業者に生きがいを持たせ活力ある第一次産業を作り出す事が、真に国力を増大させる王道であると信じるものである。