ゼム酵素の効果効能を個別に語れば以上のような分類が為されるが、ここで最も重要な事は、全体像をゆったりとした流れの中で読み、常に全てを連動させて考えるやり方である。
それぞれを近視眼的に見ると「木を見て森を見ない」ような結果に陥り兼ねない。
例えば畜産から農業生産に至る流れの見方である。
肉牛や繁殖牛の場合から始めるが、飼育時の敷料にゼム酵素を混合する。
それによって最大2年強の間、
敷料の交換が不要になる。
これは明らかに敷料コスト(平均して2,000〜3,000円/?)が削減される。
毎月最低でも1回以上の交換を要したものが未交換になると言う事は、牧場全体では多大なコスト削減になると同時に、広いがゆえに毎日を敷料の交換に追われた労働から解放される。
この効果は敷料内部の有用微生物群の劇的な活性によるものであり、ゆえに
無臭畜産が実現する。
それによって家畜のストレス(ガス充満状態だと血中酸素濃度が不足して健康体維持にも問題がある)が減少し、餌の食い込みも良くなる。
また一定の乾燥状態を常時維持できる敷料の中で飼育すれば、牛は敷料の上に良く寝てくれる事になる。
しかも敷料中に活性があるため、糞が腰の周りに付く所謂「鎧を着る」と言う現象が見られなくなる。
この鎧を着けた状態では、他の牛がこれを舐め取る習性(動物の毛繕いの習性)があるため、舐め取った牛は下痢を起こし肉質の低下に繋がるが、ゼム酵素活性場である敷料上では、これが起こらないので肉質低下には至らない。
更にこのような活性の場には病害菌が入り込む余地がなくなり、家畜の病気そのものが減少し、死亡例も激減する。
この敷料の中では糞尿は無臭のまま、常時堆肥化進行の過程にあるため、牛の出荷後(約2年後)の敷料交換段階では、既に相当完熟した状態の堆肥が得られる。
問題があるとすれば日頃の堆肥が得られなくなると言う点であるが、これは取りも直さず糞尿処理から解放されることを意味する。
また特に寒冷地では、冬場畜舎を閉切るために臭いが充満し、また通常だと堆肥化も止まるような温度になってしまうため、敷料は畜舎が開放される夏場よりも泥濘化する。
それによって牛は敷料上に寝なくなり、ゆえに冬場にこそ牛の死亡例は増大するのである。
特に子牛の繁殖牧場では、冬場の体力を温存させるために夏場よりも多量のミルクを飲ませるため尿の量が増大し、換気が制限される時期だけにアンモニア臭は特に激しくなるのである。
この時期、ゼム酵素混合敷料は発酵熱によって暖かく、臭気分解効果が高いため牛にとっては快適な場となる。
発酵熱は生物的現象であり、物理的に加温しているのとは訳が違い、外気温の高い夏場はさほど上昇しないので、熱くなり過ぎると言う問題は起こり得ない。
  またゼム酵素はタンパク分解に威力を発揮する事から、飼料に混合すれば家畜の腸管の付着糞(宿便)を除去してくれる。
栄養分は腸管から吸収されるので、家畜の肥育状態は劇的に改善される。
現在鹿児島の繁殖牛業者などは、
飼料にゼム酵素を0.1%混合する事で、全体の飼料投与量を一割カットしている。
一割程度カットしても牛の肥育状況は非常に良好で、逆に通常通りの飼料投与量を継続すると大きくなり過ぎるほどだとのことであった。
ここで飼料を一割カットするだけで、ゼム酵素代が完全に浮いてしまうので、飼育飼料のコストダウンが明確に現れる。
牛でも豚でも動物は本能的に体が求めるものを積極的に摂取する傾向があるため、先述したストレス解除と併せて、餌の食い込みは非常に良くなり、俗に言う「サシ」の入り方の違った優良な肉質を作り上げる事が出来る。
新陳代謝も活発で免疫力も増大する。
当然糞は無臭となり、酵素成分を残しているので敷料中で更なる活性を与えてくれる。(無臭急速堆肥化促進)
豚の場合も同様で、新潟県弥彦村の弥彦養豚団地橋本畜産では、牛と同様の敷料による
無排水養豚を実現している。
これまでの一般的な養豚は、豚舎のコンクリート床に排泄される糞尿を水で洗い流す手法をとってきたために、養豚農家ではその膨大な尿処理に肉体的にも経済的にも多大なエネルギーを要している。
そのような飼育方法が一般的であったため、これまでの養豚場では概ね豚舎裏などにラグーン(肥溜めを巨大化したもの)があり、実質上垂れ流し状態であった。
まだ数年前までこれが一般的な形態であり、未だにこの形態から抜け出しきっていない養豚業者も数多い。
当然地下水汚染や硝酸態窒素による土壌汚染などが問題視され、環境保全の観点からも今後の養豚には巨大な浄化槽設備を設けないと、養豚業自体の継続が困難になっている。
しかし養豚場の浄化槽は巨大な設備を要し平均的にも1基1億円前後の予算を要する現状である。
今後全ての養豚家に設備を充実させるのは不可能であろう。
当然事業としての養豚からの脱落者が続出するものと思われる。